2015年10月16日
教育学部の大庭伸也准教授と琉球大学の立田晴記教授は、捕食性昆虫のタガメが、それぞれの発育段階に応じて餌資源を効率よく利用できるように、捕獲に使う形態形質と行動を変化させることを明らかにしました。通常の捕食性昆虫では、体の小さなときには小さな餌を捕食し、成長して体が大きくなるにつれ、大きな餌を捕食できるようになるのが一般的であり、このような例は捕食性昆虫では世界初です。
本研究では、捕食性昆虫のタガメが、体の小さな若い幼虫のときには、捕獲脚である前脚の爪先が大きく湾曲しており、自分より大きな餌を捕食するのに有利に働くことを明らかにしました。タガメの幼虫は孵化した時点で体長の約3倍もあるオタマジャクシなどを捕食することができるため、捕食者一般に見られるような“自分の体の大きさにあった餌を捕食する”ということせずに1齢〜終齢幼虫間で捕食している餌のサイズに違いがないことが分かっていました。
タガメは日本最大の捕食性カメムシで成虫は両生類や魚類、ときにはヘビやカメなどの爬虫類を捕食し、その体の大きさにもかかわらず、幼虫はわずか1カ月足らずで成虫になります。本種はタンパク質が豊富なオタマジャクシや魚類などの脊椎動物を好んで捕食することにより、成長速度を高めていると考えられますが、野外で本種の幼虫が卵から孵化した時点で、餌(オタマジャクシ)のサイズを調査すると、既にタガメ幼虫の倍以上に成長していることから、捕食者一般に見られるような“自分の体の大きさにあった餌を捕食する”という採餌行動では獲物を捕食できないと考えられていました。しかし、フックのように曲がった爪で獲物にしがみつくことで、体が小さな若い幼虫のときから、自分よりも大きな餌を捕食することが可能で、大型の脊椎動物の捕食に適した爪と捕食行動の可変性を併せ持つことで、タガメに特異的な急速成長が実現したものと推測されます。
なお、本研究の成果は英国の進化生物学の専門誌『Biological Journal of the Linnean Society』に10月6日に公開されました。
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