2022年01月27日
長崎大学水産・環境科学総合研究科(環境科学専攻)大学院生の奥野研、平木麻奈および白川誠司准教授は、工学研究科のChan Bun助教と共同で、独自にデザインしたキラル有機触媒を利用した非天然型カルボン酸の精密合成のための新たな手法を開発しました。
・2021年ノーベル化学賞で話題になった、有機触媒(Organocatalyst)を利用した研究である。
・長崎大学で独自に開発した有機触媒を利用している。
・天然には存在しない、複雑な構造を持つカルボン酸を精密合成することに成功した。
・新薬の候補化合物として期待される非天然型カルボン酸の化合物ライブラリーを構築した。
・5-ALA類縁体の精密合成へも展開できることを示した。
鎮痛剤として知られるイブプロフェンに代表されるキラルカルボン酸は、重要な化合物として知られています。アミノ酸や乳酸など天然に存在する重要な物質の多くも、キラルカルボン酸の一種です。また、これらよりさらに複雑な構造を持つキラルカルボン酸は、新薬となる可能性があり、そのような化合物群を自在に人工合成できる新たな手法の開発は非常に重要です。
本研究では、長崎大学で独自に開発したキラル有機触媒を利用することで、複雑な立体環境を有する非天然型のキラルカルボン酸を、精密に合成する新たな手法を開発しました。キラルカルボン酸の不斉合成には、天然酵素を触媒とした速度論的光学分割という手法がよく利用されます。しかしこの酵素法を、複雑な立体環境を有する非天然型のキラルカルボン酸へ適用することは困難です。今回の研究では、独自の有機触媒を利用することで、酵素触媒では実現できない複雑な非天然型キラルカルボン酸の速度論的光学分割を達成しました。本手法の応用として、5-ALA類縁体の精密合成を行いました。
掲載論文誌:Bulletin of the Chemical Society of Japan
論文タイトル:Non-Enzymatic Kinetic Resolution and Desymmetrization of α-Quaternary Carboxylic Acids via Chiral Bifunctional Sulfide-Catalyzed Bromolactonization
著者:Ken Okuno, Mana Hiraki, Bun Chan, Seiji Shirakawa*
DOI : 10.1246/bcsj.20210347
URL : https://doi.org/10.1246/bcsj.20210347
◆本研究はJSPS科研費19K05480の助成を受け実施しました。