2022年01月17日
教育学部の大庭伸也准教授と同学部卒業生の寺園康秀(2015年度卒業)、高田尚(2014年度卒業)の研究グループは、2010年頃から西日本各地で増加・新たな分布記録が確認されるようになったコガタノゲンゴロウが、他種のゲンゴロウよりも活動性が高く、種間競争においても有利な性質を持っていることを初めて明らかにしました(図1)
図1.ゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウ |
ゲンゴロウ類は池や沼、水田に住み、かつては身近に見られた甲虫ですが、水辺環境の悪化に伴い年々個体数の減少が報告されています。コガタノゲンゴロウは南西諸島、九州や四国の南部に残存していたゲンゴロウの一種で、絶滅の危機が最も高いとされる環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されていました。ところが、2010年頃から西日本を中心に一度は絶滅と判断されていた地域での再発見に加え、これまで分布が確認されていなかった地域での発見例が増えてきており、絶滅の危機が小さくなったとして、2012年の環境省レッドリストで絶滅危惧IA類から絶滅危惧Ⅱ類に下方修正されました。
このコガタノゲンゴロウの増加の謎を解明する目的で、昨年公表した著者らの論文では、低温では発育できないこと、高温になるほど幼虫の生存率が高くなることから、温暖化の影響が分布拡大にプラスの影響を与えていることを示唆しました。今回の論文では、近縁種のゲンゴロウとクロゲンゴロウと比べて、コガタノゲンゴロウは、他種よりも水中を活発に泳ぐこと、3種が存在する水槽の中では、最初にコガタノゲンゴロウがエサを見つける可能性が高いこと(図2左)、体サイズはゲンゴロウよりも小さいにもかかわらず、最も摂食できる餌の量が多いこと(図2右)が示されました。
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このように、地球温暖化による生存率の向上とともに、高い競争能力を備えているコガタノゲンゴロウが他種のゲンゴロウ類との種間競争(別種同士の餌資源や生息場所を巡る競争)においても有利となっていることが示唆されます。
本研究の成果は水生生物学の国際誌『Hydrobiologia』に2022年1月16日に早期公開されました。
Ohba S, Terazono Y, Takada S (2022) Interspecific competition amongst three species of large-bodied diving beetles: is the species with expanded distribution an active swimmer and a better forager? Hydrobiologia, Early View
https://link.springer.com/article/10.1007/s10750-021-04774-9