2022年01月17日
教育学部の大庭伸也准教授と研究者・渡辺黎也さん(いであ株式会社 国土環境研究所 環境技術部所属 技師)の研究グループは、水生昆虫(コウチュウ目・カメムシ目・トンボ目)の生息地に侵略的外来生物のアメリカザリガニが入ると個体数や種数が減少することを野外調査から明らかにしました(図1)。 特に、水草がある水辺環境を好む大型の水生昆虫は、個体数が激減することが判明しました。
図1.アメリカザリガニの侵入によって水生昆虫の個体数と種数が激減する |
アメリカザリガニは小学校や中学校の教材としても利用されるほど、身近な生物教材やペットとして認識されていますが、もともとは日本には住んでいなかった外来種です。ところが、近年、我が国の淡水環境における影響の大きさが指摘されており、環境省の生態系被害防止外来種となっています。
今回の研究では、希少水生昆虫類が残存する地域において、アメリカザリガニが侵入した水域と未侵入の水域との間で水生昆虫の種数や個体数を比較しました。その結果、アメリカザリガニが侵入した環境では、水中の水草をエサにしたり、産卵場所やつかむ場所として利用する水生昆虫や水底を利用する水生昆虫(ゲンゴロウ類(ゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、ケシゲンゴロウなど)、コガシラミズムシ類(キイロコガシラミズムシ、ヒメコガシラミズムシなど)、ガムシ類(ガムシ、スジヒラタガムシなど)、タガメ、コオイムシ類、ミズカマキリ類、オオミズムシ、トンボの幼虫・ヤゴ(フタスジサナエなど))が激減するのに対して、水面や水面近くに浮いて生活し、全国的な個体数の減少が報告されていない水生昆虫(アメンボ類やマツモムシ)はほとんど影響を受けないことを明らかにしました(図2)。
図2.アメリカザリガニの直接的な捕食や水草の減少により、水面付近で生活する水生昆虫だけになる |
本研究の結果は、希少な水生昆虫類が生息する地域では、大原則としてアメリカザリガニを入れないこと、もし入ってしまった場合は積極的に駆除する必要があることを示唆しています。
本研究の成果は外来生物に関する国際誌『Biological Invasions』に2022年1月15日に早期公開されました。
Watanabe R, Ohba S (2022) Comparison of the community composition of aquatic insects between wetlands with and without the presence of Procambarus clarkii: a case study from Japanese wetlands. Biological Invasions, Early View
https://link.springer.com/article/10.1007/s10530-021-02700-7