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長崎大学初 学生による講義の脱炭素化を実践 カーボンオフセットクレジットを活用

 環境科学部3年の学生たちが、講義で利用する施設や通学によって排出される二酸化炭素(CO2)の量を算出し、カーボンオフセットクレジットを購入して、その全量をオフセットしました。
 学生からは「CO2の排出量を数値化することで環境問題に対して自分がどのくらい責任を持たないといけないのかがわかった」といった感想が寄せられました。環境問題について学ぶ学生たちが自らの学びの場を対象にカーボンオフセットをするのは学内でも初めての取り組みとなります。

カーボンオフセットクレジット購入による温室効果ガス排出量無効化証明書を持つ昔ゼミの3年生
(左から)田河さん、松尾さん、 片山さん、 岩村さん

 講義の脱炭素化実践を行ったのは、環境科学部の昔宣希(ソク サニー)准教授と、そのゼミに所属する3年生、岩村麻弘さん、片山実優さん、田河悠聖さん、松尾嘉乃さんの4人です。
 彼らは環境科学部 「環境ビジネス論」の受講生に温室効果ガス排出削減の努力を呼びかける一方、どうしても削減できない開講に伴う施設利用や、83名の受講生や担当教員の通学・通勤による交通利用で排出されるCO2eq(※1)の量を算出しました。

 施設利用については、90分講義15回分の電灯や空調等による排出量を計算し、受講生と担当教員には通勤・通学手段についてアンケートを行い、その結果をもとに排出量を計算しました。
 その結果、施設利用による排出量が0.05トン、通学・通勤による排出量が0.4トンの合計0.45トンとなりました。この、どうしても削減できない分についてはカーボンオフセットクレジットを購入しました。
 なお、オフセットクレジットについては、J-クレジット(※2)の各種オフセットクレジットを比較・選定するために受講生へアンケートを行った結果、「出雲の森プロジェクト」によるJ-クレジットを1トン購入し、この講義で排出されるCO2を実質ゼロにしました。このクレジットを選んだ理由として「森林の機能向上に繋がる」「使い道が明確であった」という意見がみられ、クレジットの購入が環境保全に直結することが分かりやすいものが選択されやすい可能性を示唆しました。

 この活動を通して学生たちはカーボンオフセットの実行方法、さらにはカーボンプライシングの仕組みや分類(政府主導、企業)、J-クレジット制度について学び「温室効果ガスの価格付けは需要があり、世界的にもっと発展してもよい」「料金を支払ったからといって直接的なCO2排出量の減少にはつながらないと思う」といった感想を持ちました。また、「クレジットの値段は何に基づいて定められているのか」「オフセットの実行でどのような効果が出るのか」「施設利用・交通利用以外の排出源も特定し算出する必要がある」といった疑問や課題も出され、今後さらに詳しく学んでいくことにしています。
 
長崎大学では、昔宣希(ソク サニー)准教授の監修の元、2022年より公開講座「リレー講座」におけるCO2排出量を計算し、カーボンオフセットクレジット購入により全量をオフセットする取り組みも続けています。

※1 CO2eq
二酸化炭素換算。温室効果ガスはCO2だけではなくメタンやフロンなど複数あり、それぞれ温室効果の度合いが違うため、温室効果ガス排出量をCO2の換算値にして比較する。

※2 J-クレジット
経済産業省、環境省、農林水産省が運用する「J-クレジット制度」により認証された二酸化炭素 (CO2) など温室効果ガスの排出削減量や吸収量のこと。排出権とも称される。
省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組によるCO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度をJ-クレジット制度と言い、創出されたクレジットは低炭素社会実行計画の目標達成やカーボンオフセットなどに活用することができる。

▶昔 宣希(ソク サニー)准教授 研究紹介
https://www.sshresearchgroup.com/

https://www.env.nagasaki-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/04/ca33eeb474257a74cb84bdcdb1cd498d.pdf