2022年11月24日
長崎大学医学部では、毎年長崎純心大学福祉系学科との共修で、長崎地域医療セミナーin GOTO(地域医療を学ぶフィールドワーク)を開講しています。地域医療および医療と福祉の多職種連携を学ぶことをテーマに掲げ、五島市に3日間滞在し、講義や演習等を行う合宿形式のセミナーです。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年、2021年と長崎大学学内での開催を余儀なくされていました。2022年度のセミナーでは、8月22日(月)の日帰りではありましたが、久しぶりに五島市へ訪問することが叶いました。学生はフィールドワークとして8つのチームに分かれ、五島の各地域を歩きながら、離島の医療や福祉の現場を見聞きしつつ、しまの文化や交通、産業など生活面を体感することができました。そして、学生実行委員が野口市太郎市長を表敬訪問し、五島に関する貴重なお話を伺うことができました。
五島市訪問の中で2つのグループの学生と引率教員が、そらいいな株式会社のドローン発着拠点(五島市下大津)を訪問しました。まず、代表取締役の松山ミッシェル実香氏より、ドローン物流事業を五島で開始した経緯、米国Zipline(ジップライン)社製ドローンの性能に加え、実際に五島で開始された事業内容等の説明をしてもらいました。
Zipline社のドローンは固定翼型で、カタパルト方式で離陸し、目的地上空に到着したらパラシュートボックスを投下する方法で医薬品等の物品を届けます。よく目にするマルチコプタータイプのドローンと比べて巡航速度が速く、航続距離が長いのが特徴で、かなりの悪天候でも飛行可能とされています。既にルワンダやガーナでは社会実装されており、日常的に医薬品や血液製剤、新型コロナウイルスのワクチンなどを搬送しているとのことでした。
そらいいな株式会社でも既に五島各所(奈留島、嵯峨島、三井楽、玉之浦、上五島)に航路を開設しており、一部では医療用医薬品や日用品を配送しています。長崎大学は、そらいいな株式会社・豊田通商株式会社と連携協定を結び、多職種連携型遠隔医療とドローン物流を組み合せたへき地医療支援モデルの実証に取り組んでいます。
次に、ドローン配送のデモンストレーションを見学させてもらいました。専用のパラシュートボックスに物品(野菜と菓子類)を格納し、発射台にドローンをセットして周囲の安全確認を行ったのち、一気に離陸しました。ドローンの位置はGPSでリアルタイムに確認することができます。デモンストレーション飛行では、発着拠点付近の海上を大きく旋回し、近くの空き地にパラシュートボックスを投下して戻ってきました。戻る時は発着拠点に張られたワイヤーに機体のフックを引っかけ、宙づり状態で回収される仕組みになっています。
美しい機体、スピーディーでダイナミックな動き、そしてパラシュートボックスを落下させる位置の正確性などを目の当たりにして、参加者からは自然に大きな歓声が上がっていました。松山氏は、「本事業は日本では五島だけで実施しています。この地から新しい物流の方法を模索していきたい。」と抱負を述べておられました。
しまの暮らし、離島医療の現状と課題を探るフィールドワークでしたが、実は最先端の取り組みが五島で行われていること、医学部もこれに協力していることを知ったことは、大きな収穫となりました。