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リサーチ・アドミニストレーター(URA)をご存じですか ~長崎大学に「認定URA」が誕生~

 みなさんは「リサーチ・アドミニストレーター」という職種をご存じでしょうか。一般にURAと言われることが多く、「それなら聞いたことがある」という方もいるかもしれません。大学で研究活動を支援する専門職で、大学運営を構成する教員、事務職員とともに第3の大学専門職とされます。

 URAは研究の企画から研究資金申請書のブラッシュアップや資金の獲得、学内外との連携のコーディネート、実際に開始された研究プロジェクトのマネジメント、さらには研究成果の広報や大学の研究力の分析、学内研究助成グラントの設計まで、大学の研究活動と研究戦略の企画立案を幅広く支援するプロフェッショナルです。

 平成23年度に文部科学省が「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」という事業を開始し、導入が始まった比較的新しい職種です。ちなみに、長崎大学では現在、URAという職名で10名が活躍しています。そのほかにも産学連携コーディネーターなどといった職名のスタッフも16名在籍しています。職名は違いますが、URAと同様の業務を担う仲間です。

 文部科学省のこの事業は当初の「URAの育成・確保」から、10年ほどの間に「配置の拡大による研究力の強化」へと展開し、現在は「URA業務の質保証に資する認定制度の導入」の段階に至っています。そして今年に入って開始された認定審査において、認定リサーチ・アドミニストレーター(認定URA)の認定を受けたのが、長崎大学の王 鴻香(ワン ホンシャン)さんです。現在、全国に48名しかいない認定URAのひとりとして、王さんは研究開発推進機構 研究推進部門 学術研究支援室に所属し、長崎大学の研究者の支援活動にあたっています。

認定URAの認定を受けた王 鴻香(ワン ホンシャン)さん



Q
 URAの機能強化が求められているのは何故ですか?
A これからの大学全体の研究力向上に不可欠です

 研究環境の変化が一番の要因だと思います。今では研究を行うためには、科研費など外部資金獲得が必要不可欠です。そして、より大きな研究を行うには国際連携や産官との連携も求められます。特に大型外部資金申請の手続きは複雑でノウハウも必要ですし、研究に適切な連携相手を探すための情報収集も、提携関係を結ぶ手続きも非常に手間のかかる仕事です。URAはそのような研究者のサポートをします。狙ったテーマの研究に実際に取り組めるよう、そして研究活動そのものに集中できる環境を整えて行くのです。それが結果として大学全体の研究力向上に貢献するからこそ、URAの機能強化が求められているのだと思います。

Q 実際にURAの皆さんの支援による成果が上がっているのですか?
A 採択率の向上や新規研究プロジェクト創出などの成果を上げています

 携わる業務が幅広いため、何を成果とするかは難しいのですが、例えば、初めて科研費を申請する研究者の方の場合、URAのサポートの有無によってその採択率は大きく変わります。主に申請書のブラッシュアップをお手伝いするのですが、その採択率は6~7割程度です。このようなサポートがない場合の採択率はだいたい3割程度なので、その差を考えると、URAのサポートには成果があったと言っても良いと思います。
 また、大学からの機関申請のプロジェクトもありますが、プロジェクトの企画、部局間や事務部署との調整等学内での折衝、申請書やヒアリング資料の作成、採択後のプロジェクトマネジメント等一連の業務にURAが中心的な役割を果たし、プロジェクトを成功させたことも成果と言えるでしょう。
さらに、研究者間交流の機会を作ることを通して、異分野研究プロジェクトにつながったことも嬉しい成果です。

Q URAの皆さんによる支援の特徴は何でしょう?
A 客観的、多角的に自身の研究を見つめることが出来ます

 客観的な視点から研究を俯瞰出来る、という事ではないでしょうか。どうしても研究者の方は専門的な見地から強い思い入れでご自身の研究をアピールされます。しかし、例えば外部資金の審査を行うメンバーは、その分野の専門家の方たちばかりではありません。異分野の審査員であっても、普遍的にその研究の価値が伝わるように申請書をブラッシュアップするなどは、URAならではのサポートだと思います。
 また、私たちは、要望があれば審査時に行われるヒアリングに備えて、模擬ヒアリングも実施します。模擬ヒアリングでは、異なる分野の研究者同士も意見交換ができ、多様な視点から自分の研究を磨くことができたといった言葉を多くの研究者からいただきます。これも私たちURAの支援活動の特徴だと思います。



Q 長崎大学においてさらにURAの支援を活性化するために必要なことは何ですか?
A URAの業務内容や業務実績を知っていただくことが重要です

 「つなぐ」は私の活動のキーワードです。人と人、あるいは人と研究をつなぎ、さらに研究と研究がつながって新たな研究に発展できたらと常に願っています。URAはいわば“つなぐ職”です。ただ、どのようにつないでいくか、URAにはさらなる工夫と地道な努力が必要でしょう。

 本学における喫緊の課題は、研究者の皆さんと私たちとのさらなる信頼関係の構築だと思います。これまでもサポート実績を積んで徐々に学内ネットワークも広げてきましたが、もっと多くの研究者の皆さんの目に触れて、URAのサポートの内容や実績を知っていただくことが必要ですね。そして、目的が明確でなくても、ちょっとURAに相談してみようとか、話を聞いてもらおう、と研究者の方々も気軽にURAに声を掛けていただきたいと思います。

Q 認定リサーチ・アドミニストレーターの資格取得にチャレンジしたのは何故ですか?
A 自らのスキルの客観的な評価と若手のモチベーション向上のために

 これまで試行錯誤を繰り返してURAの仕事を進めてきました。もちろん、お役に立ててきたという自負はありましたが、現状で自分はURAに求められるスキルに達しているのか、ということを客観的に知る手だてはありませんでした。認定URA取得のためには2つの研修コースをクリアする必要があります。この研修を通して、URAに求められるスキルを系統立てて学べると思ったのです。客観的な評価を受けることで、研究者の方々からも信頼も得やすくなるという期待もありました。その結果、URAの活動を加速化できるでしょうし。それに、若手URAにとっても認定を得ることはモチベーションになるのではないでしょうか。URA人材の定着、育成という意味でも、いち早くチャレンジすることに意味があると考えました。

Q これから取り組みたいことはありますか?
A URA同士も連携し、部局を超えた大きなプロジェクト獲得を目指したい

 本学では、ここ数年URAの人数がかなり増えています。私たちはURAが研究開発推進機構のいくつかの部門に散在し、それぞれが違う場所で学術研究支援、産学連携支援、知財、リスクマネジメントなどの業務にあたっています。しかし、研究活動を有効に支援するためには、複数のスキル、知識、経験を組み合わせて連動させることが重要ですし、1人1人の活動だけに依存すると、1人1人の能力やスキルを超えるような仕事と成果は期待できません。ですから、URAの本領を発揮するためには、みんなで情報共有、協働の仕組みを作ることができたらと考えています。長崎大学の研究はとても魅力的で面白く、夢のあるものも多いです。URAが協働して、部局を超えた研究者の方々を結び付け、大学全体として大きなプロジェクトの獲得にチャレンジすることが出来ればいいな、と思っています。

▶外部資金獲得支援や異分野連携支援についてはこちら
長崎大学学術研究支援室